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水面下

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ザザキ×ケタル

GoSパロ。甘め。いちゃいちゃしてます。

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 あたたかな空気の心地よさに包まれながら、木漏れ日差し込む木陰の下で、涅色の尻尾がゆらゆら揺れ、機嫌が良い現れなのか、無意識に小鳥のさえずりにさえ頭部の黒い大きな耳がぴくぴくと反応を示す。
 涅色の獣の毛並みと濃紺の髪をゆらめかせるケタルは、自分の姿が映り込む鏡のように磨かれた刃を手に取り、愛しそうに眺めると手入れ用の布で丁寧に磨きはじめた。基本的にケタルは体術を好むほうではあるが、本格的な戦闘とあれば武器は必須であり、そのために用意した自分用の武器は今では分身のようなものだ。その愛着もあってか、自分の分身を可愛がるように武器の手入れの時間は意外と性にあっているようだった。
 そんないつもの日課をこなすようにケタルはそれは機嫌よく、丹念に武器を磨いていたのだが、木々で休んでいた鳥たちが飛び立つのと同時に、背後になにかの気配を感じた。
 獣人族とはいえ背後を捕られれば警戒するようなものだが、足音と微かな香りを嗅いで、その気配を知ってか知らずかケタルは特別何も動じようとはしなかった。
 気配が近づいたかと思えばそれは、武器の手入れをするケタルの背後を陣取るように体温と重さを預けつつ、ケタルの体を足で覆うように座り込む。そんなことをしても反応が希薄なことが嬉しいのかつまらないのか、それはケタルの腰を両手で抱きつつ、涅色の耳を味わうように、ねっとりと舌で舐めはじめた。
「……ッ!」
 毛繕いとは違う舌触りに、ぞわりと背中を震わせる。うっとおしい、と視線を送れば、自分の姿が今度は金色の瞳に捕らわれた。
「……ザザキ、……なんだよ」
「べつにィ」
 ザザキの別に、の意味は別名「かまえ」だ。
 そんなことは知っている、からこそケタルはあえて無視をしたかった。今は大事な武器の手入れの邪魔をされたくない、というよりザザキの相手をするのが面倒だった。どうせ群れの女たちに、子供たちの訓練の面倒を見ろと言われるのが嫌で抜け出してきたに違いないし、あとからこの状況を女たちに見つかり、自分を口実にされた上に説教に巻き込まれるのは御免だった。
「仕事、ちゃんとしてこいよ。当番だろ」
「ヤだ。なんでオレ様がガキの面倒見なきゃなんねーんだ、ケタルがやれ得意だろ」
「……俺は二日前にもうやった、順番は守れ馬鹿」
「うげ……」
 悪態をつきながらザザキは自分の額をケタルの肩口にぐりぐりと押し付け、いやだという感情を態度で示す。こんな、人になにかを教える気のないザザキは、戦闘力や判断力はそれはもう群れから信頼を置かれているため、正直子供たちや仲間の指導者になれと言われているほどだ。
 更に言えば意外と、子供の面倒が上手い。ザザキがどこか子供っぽい面を未だに無くさないためか、共感を得た子供たちはザザキを尊敬しつつ親に逆らう子供のように同類視されているため、それはもう、なつかれていた。
 しかし本人は基本的に群れることが嫌いで、いやだいやだと逃げ回り断り続けた。
そんなザザキを、群れの将来のためだとかお前が一番強いからとかジョウエンとケタルで上手く言いくるめ、結果、説得の末に「たまになら」と、折れたのだ。
「チビ、暇だ」
 とは言ったものの、それでもコレである。
「いや仕事してこいって言ってるだろ」
「ヤだ、つってんだろ」
「はーー……」
 これでは埒があかない。
 駄々をこねるザザキに呆れすぎて何も言えなくなってきたケタルは、深いため息をつくとまた自分の目線を刃へ落とした。磨くと輝く武器はこんなに素直なのに…と、よくわからない比較をしはじめた自分がいることに気づき、ケタルは頭をふるふると振りもう一度武器を磨きはじめ、ザザキのことは諦めて無視を決め込むことにした。
 ケタルの様子で思考回路が見て取れたザザキは、もちろんそのままオレ様という存在を無視させるなんてこと、許すわけもなく。
 ケタルを後ろから抱き抱えながら、腰に回していた手を前掛けの中に滑り込ませつつ、目の前の滑らかな首筋を甘噛みすれば、ぴくりと肩が揺れた。しめしめと、それでも無言を貫き通すケタルに対してザザキは首筋を、涅色の耳を、時々舐めてみては甘噛みし、引き締まった体の線をなぞるように両手で味わう。どこまで耐えてくれるだろうかと、ザザキは赤毛の尻尾をゆらゆら揺らめかせながら、ケタルの色情を誘いはじめる。ケタルが乗れば勝ち、乗らなくてもそれはそれでこのままどこまで耐えてくれるか楽しむのもザザキの悪趣味の一環だ。

 胸飾りにまで両手が届くと、ふたつの突起を軽く撫でつつ徐々に強弱をつけていく。本人の意思に反してぷくりと形を成してきた胸飾りを、ザザキは愛しそうにふたつの指先で捕らえて強く擦りはじめた。無言を貫いていたケタルもさすがに自分の体を這う手先や舌に気をとられるのか、武器を撫でる手が震えている。それを見逃すはずもなく、もっともっとと熱を上げるように、ザザキは左手で胸飾りに悪戯を加えたまま右手でケタルの腰を自分の体に寄せた。
 その瞬間、ザザキとより体が密着したケタルが腰と尾に違和感を感じてザザキのほうを焦って振り返れば、先程とは違う、色情と熱を纏った金色の瞳が弧を描いていることに気づいて身震いしたのが見てとれた。
「お前……馬鹿か、こんなところで……」
「チビがわりィんだろ」
 自分の尾に当たる熱と固さに勘づいたケタルが恨めしそうな顔でザザキを睨めば、ザザキはニヤニヤと笑うばかり。さすがに調子に乗りすぎだ、仕事をほっぽってこんなところで、更に言えばそんなザザキを探していつ女子供がやってくるかもわからない場所で。
 ケタルが文句のひとつでも言ってやらないともう駄目かと観念して口を開きかけた、のを察したザザキはケタルの唇に噛みついて、役目を終えた右手でケタルの股間に掌を宛がった。衣類の上からケタルの性器を上下に揉み込めば、それは微弱ながら熱を持ちはじめ、噛みついた唇からはくぐもった声が漏れる。
反射で、武器を手離したケタルの手がザザキの前掛けを掴んだ。
 気をよくしたザザキはケタルの口内に舌を滑り込ませ、上顎をくすぐるように何度か撫でてから、奥に逃げかけていた舌を捕まえ絡みとれば、ケタルの体がぶるりと震えたのがわかった。そのまま舌を吸い上げて自分の口の中に誘い込み、流れるままに招いた舌を自分の歯で甘く噛んでやれば、前掛けを掴んだケタルの手に力が込められ甘い吐息が漏れた。

 ここまできてしまえば、もうあとは落ちてくる。

 呼吸を乱しはじめたケタルへ、観念したかと唇を解放してやれば、ケタルはそのまま力が抜けたように俯き額をザザキに預ける形になった。
 そう、そのまま落ちてこい。
 ザザキが舌舐めずりをしながらケタルの熱を呼び起こそうと形をなぞりはじめると、呻くような声と共に体がピクリと跳ね、名前を呼ばれた。
「……ザザキ」
「あン?」
 ケタルの顔がゆっくりと持ちがあって、ザザキと金色の瞳と、濃紺の瞳がかち合った、瞬間、ザザキの目の前に自分の姿が現れた。
「……いい加減に、しろよ……」
「……」
 それが、ケタルの手入れしていた刃が目の前にいるのだとやっと認識したザザキは、無言でケタルから手を離して両手を上げた。
 戦闘力が上な自分がこのまま刃を弾いて無理矢理抱いてしまうという手もあるが、今回ばかりは状況と場所が悪かったようで、ザザキに完全に体を預けることになる理性の消えぬうちにケタルが性欲に背反したということだ。言わば無理に抱いたとして、この先いつ番として熱を満たしてくれるかわからない。という状況であることはいくら強欲で傲慢なザザキでも理解できた。
 というより、前科があるので武器を向けられてしまっては諦めざるを得なかった。
「……その刃ァ向けんじゃねェよ」
「……わかればいい」
 ザザキの尻尾が完全に地面に垂れているのを見て、本人が諦めたことを確認したケタルは、はぁと大きな溜め息をついて自身の熱を落ち着かせようとザザキからずりずりと体を離した。
 感情が直に反映される尾はこういうときに役に立つ、こういうときに情けない、と、思っているのだろうとお互い改めて心中叫びつつ、ケタルはザザキに向き直る。
「ザザキ」
「……ンだよ」
「仕事行け」
「……」
 男が廃ってしまった後味の悪さを感じているであろうザザキが苦虫を潰したような顔をした。あからさまに不満である、と体ぜんぶから滲み出ている姿は、いつも威勢のいいザザキを知っているだけに、どこか愛しくも見えた。
 もう一度大きく溜め息をついたケタルは、仕方ないなと呟くとまたずりずりとザザキに近寄ると、赤くなっているザザキの唇をひと舐め。その行動が意外だと言わんばかりに目を丸くしてガン見してくるザザキを見て、恥ずかしさ余ってケタルは立ち上がると、聞こえるか聞こえないかの声を漏らす。
 無論、その声がザザキに届かないわけがなく、クッと笑ったザザキが無言で立ち上がれば「覚悟しとけバァーカ」と一言、言い捨てて風のように走り去ってしまった。

 姿を見送ったケタルは、未だ落ち着かぬ動悸のせいでしばらく呆然としていたが、肌をかすめる冷たい風が熱に脅かされていた理性を徐々に静めていくのを感じながら、だんだんと冷静になってきた頭をがしがしと掻きむしりケタルはがっくり項垂れた。

「いや……なに言ってんだよ……」

 徐々に自分に押し寄せる後悔で、自分の理性が実は麻痺していたのだということに気づいてしまった。
 もうザザキの姿が見えない、走り去った先をぼうっと見ながら、ケタルは未だに抜けきらない熱に浮かされている正直な自身を妬ましく感じ、また、大きく息を吐いてから同時に自分へ悪態をついた。


「……なんだよ、終わったら相手してやるから、って……馬鹿かよ」



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2019/09/22 Site up
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